前向きに体をととのえる、ゆるっと実践ガイド

ファスティング(断食)というとストイックなイメージですが、妊活期におすすめなのは“ゆるい時間制限食(Time-Restricted Eating:TRE)”。食べる量を削るより、“食べる時間をととのえる”ほうが続けやすく、睡眠・代謝・ホルモンのリズム作りにもプラスに働きやすいのが魅力です。
本記事は、妊活中でも安心して取り入れやすい“ほどよいファスティング”のメリットとやり方を、具体的にご紹介します。
目次
- 妊活の今と、ファスティングが“味方”になる理由
- ファスティングって何をどうするの?(やさしい基礎)
- 妊活で“効きやすい”メリット5選
- 今日からできる!安全で明るい実践ステップ
- 避けたいやり方(ここだけは要注意)
- 7日間“ゆるファス”モデルプラン & 献立アイデア
- 栄養は削らない!妊活×ファスティングの食べ方設計
- よくある質問(Q&A)
- まとめ:小さく始めて、心地よく続ける
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参考にした主な資料
仕事や家事で忙しい毎日。睡眠は短く、夜遅い食事や間食でからだのリズムが後ろ寄りになりがちです。そこに“食べる時間を少し前倒し”する工夫を入れると、
- 朝のスイッチが入りやすい(代謝のアクセルON)
- 夜の食欲が落ち着きやすい(どか食い・夜スイーツの衝動が減る)
- 翌朝の目覚めスッキリ(睡眠の質アップ体感)
…など、体内時計に合わせた“リズム美人”に近づけます。妊活の土台は睡眠・代謝・ストレスケア。そこにファスティングは、やさしく効くテコになります。

ファスティングは「食べる時間」や「食べる量」を整える方法の総称。妊活期に相性がいいのは時間制限食(TRE)です。
- 時間制限食(TRE):
1日の食事ウィンドウを10〜12時間に設定(例:8:00〜18:00)。
量は極端に削らず、時間だけ整えるのがポイント。 - 5:2や隔日断食、長時間断食:
妊活期は基本おすすめしません(後述の“避けたい”へ)。
合言葉は、「量より、時間」。これだけで続けやすさが段違いです。

メリット1:代謝のキレが良くなる
食べる時間をまとめると、血糖の波がゆるやかに。結果、午後のだるさや甘いもの欲が落ち着き、脂肪燃焼スイッチも入りやすくなります。
メリット2:排卵・ホルモンのリズムを整えやすい
無理なカロリー制限は逆効果ですが、“時間”を整えるだけなら視床下部−下垂体−卵巣軸への負担が少なく、周期の安定を後押しする手応えが期待できます(とくにPCOS傾向の方でインスリン感受性の底上げが狙いやすい)。
メリット3:睡眠の質が上がり、回復力UP
“寝る3時間前はノー食事”を守りやすくなり、深い眠りが増えやすい。睡眠はホルモン分泌の要。目覚めスッキリ→日中の活動性UPの好循環に。
メリット4:腸が喜ぶ——胃腸の“おやすみ時間”を確保
食べ続けモードから少し離れると、むくみや張りが落ち着く人も。腸内環境の整いは栄養の吸収効率UPにもつながります。
メリット5:メンタルも軽やかに
“制限するダイエット”よりも、「ルールは時間だけ」の気楽さ。達成感を毎日リセットでき、ストレス過多による食べ過ぎを避けやすくなります。
どれも“劇的な我慢”ではなく、「ちょっと前倒し&早めにクローズ」の工夫でOK。

- 水分:1.5〜2L/日(カフェインは合計2杯まで)
- 朝昼夕の三食にたんぱく質を必ず配置
- 就寝3時間前は食べないを意識
例:7:30〜19:30。夜の締めを早めるだけで、翌朝がラクに。
例:8:00〜18:00。最も続けやすく、妊活と相性良し。
空腹ハード運動は避け、ウォーキング・ヨガでOK。
8時間以下は妊活期は基本推奨しません。
採卵・移植が近い時期/妊娠判明後は**“通常食”に切替え**ましょう。
チェックポイント(毎週)
- 周期(遅れ/乱れ)、基礎体温、だるさ、立ちくらみ
→ 気になる変化があれば即オフして、栄養優先へ。

- 48時間超の断食/連続長期断食:ホルモン撹乱・無月経リスク
- ドライファスティング(水分も断つ):脱水・便秘・ふらつき
- 極端なカロリー制限(基礎代謝以下):疲労・筋量低下・基礎体温ダウン
- 食事ウィンドウ8時間未満の“長期常用”:妊活期はメリットよりデメリットが出やすい
- 空腹×高強度運動:低血糖・めまいの原因に
迷ったら“軽い・短期・様子見しながら”。これが妊活モードの鉄則です。

食事ウィンドウ:8:00〜18:00(10時間)/平日のみ運用、週末は通常食
食事ウィンドウの10時間の中で食事をする
- Day1(月)
- 朝:オートミール+牛乳/豆乳、ゆで卵、キウイ
- 昼:鮭の塩焼き定食(雑穀ごはん・味噌汁・青菜)
- 間:ヨーグルト or ナッツ小袋
- 夜:鶏むねのレモン蒸し、ブロッコリー、冷ややっこ
- Day2(火)
- 朝:全粒パン+アボカド&ツナ、トマト、スープ
- 昼:鯖缶トマトパスタ(全粒麺)、サラダ
- 間:チーズ1切れ
- 夜:豆腐ハンバーグ、ひじき、ほうれん草おひたし
- Day3(水)
- 朝:納豆+卵かけ雑穀ごはん、味噌汁、りんご
- 昼:豚しゃぶサラダごはん(ごまドレ)
- 間:枝豆 or きなこ牛乳
- 夜:サーモンムニエル、ラタトゥイユ
- Day4(木)
- 朝:バナナ+ピーナッツバター、ギリシャヨーグルト
- 昼:チキンと彩り野菜のカレー(玄米)
- 間:くるみ
- 夜:厚揚げ野菜あん、わかめスープ
- Day5(金)
- 朝:ツナとコーンの卵焼き、青菜おにぎり
- 昼:寿司(青魚多め)+豆腐味噌汁
- 間:ダークチョコ少量
- 夜:白身魚のホイル焼き、キャベツ蒸し
週末は“通常食”で家族時間を満喫。無理せずメリハリが続くコツです。

- 葉酸:400µg/日(妊娠前から)
- 鉄:赤身肉・あさり・大豆+ビタミンCで吸収UP
- ビタミンD:鮭・卵・強化乳、必要に応じてサプリ
- カルシウム:牛乳・ヨーグルト・小魚・青菜
- オメガ3脂肪酸:青魚(週2回)/えごま・亜麻仁油/くるみ
- たんぱく質を毎食(体重×1.0〜1.2g/日目安)
- 主食は“白だけにしない”がおすすめ(雑穀・全粒を混ぜて血糖の山を低く)
- “夜は軽め+早め”(睡眠の質が上がり翌日のコンディションが段違い)
サプリはあくまで“補助”。基本は食事で満たし、足りない分だけ上手にプラス。

Q. 16時間断食(8時間食事)はダメ?
A. “ずっと”はおすすめしません。妊活期は10〜12時間ウィンドウが安全寄り。イベント期(採卵/移植/陽性判定後)は通常食へ切替を。
Q. すぐ体重を落としたい!
A. 急ぎは逆効果になりやすいです。月−1〜2kgのゆるやかな調整がホルモンにも優しい。
Q. 空腹時に運動してもOK?
A. 軽いウォーキングやヨガならOK。強度高め・長時間は低血糖の恐れがあるので、食後or間食後に。
Q. PCOSでも効果はありますか?
A. 時間制限食は相性がよい例が多いです。血糖コントロールと体重調整がしやすく、周期の整いにつながるケースがあります。医療者と相談しながら進めましょう。

- 妊活期は“量より時間”で整えるゆるファスが好相性。
- 10〜12時間の食事ウィンドウで代謝・睡眠・食欲のリズムを前向きに。
- 栄養は最優先(特に葉酸400µg/日は妊娠前から)。
- 採卵・移植・妊娠判明後は断食オフで“満たす栄養”へ。
- 体調サインを見ながら、明るく、軽やかに続けていきましょう。
参考記事
- 米国産科婦人科学会(ACOG)「Preconception Counseling / Folic Acid:妊娠前からの葉酸推奨量」
→ https://www.acog.org/clinical/clinical-guidance/committee-opinion/articles/2019/01/prepregnancy-counseling(ACOG) - 米国生殖医学会(ASRM)委員会見解「肥満・体重管理と生殖アウトカム:生活介入の意義」
→ https://www.asrm.org/practice-guidance/practice-committee-documents/obesity-and-reproduction-a-committee-opinion-2021/ (ASRM) - 断続的断食(Intermittent Fasting)・時間制限食(TRE)に関する近年の総説・レビュー(女性の生殖・代謝、PCOSを中心とした知見の整理)
→ https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589936824000732 (サイエンスダイレクト) - 妊娠中・授乳中の宗教的断食に関する公衆衛生的勧告(体調不良時の中止・個別相談の重要性)
→ (直接のガイドラインのリンクは特定できなかったため、関連レビュー) https://www.eatingwell.com/article/8011036/intermittent-fasting-fertility-hormones-new-research/ (Women’s Health) - 国内プレコンセプションケア資料「妊娠前からの栄養(葉酸・鉄・ビタミンD・カルシウム・オメガ3)の重要性」
→ (日本の公的PDFなどデータベースあり) https://www.health.ny.gov/publications/2026.pdf (health.ny.gov) - 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」 (PDF)→ https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a29a9bee-4d29-482d-a63b-5f9cb8ea0aa2/aaaf2a82/20230401_policies_boshihoken_shokuji_02.pdf
- 同じく厚生労働省「妊娠を計画している女性/妊娠中・授乳中女性の食事摂取基準」 (PDF)→ https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586574.pdf
- 「妊産婦のための食生活指針」の改定案・調査報告(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 等) (PDF)→ https://www.nibn.go.jp/eiken/ninsanpu/download_files/houkokusyo.pdf