はじめに
「妊活」という言葉を耳にすると、多くの人が女性側の取り組みを想像するかもしれません。しかし、妊活は女性だけの課題ではなく、男性も積極的に参加すべきものです。実際、不妊の原因の半数は男性にあるとされており、男性が主体的に取り組むことで妊娠の可能性を大きく高めることができます。
本記事では、妊活で男性がやるべきことをテーマに、妊活前の準備から妊活中に心がけたい生活習慣まで、幅広く解説します。

妊活は女性が主体的に取り組むイメージが強いですが、WHO(世界保健機関)の調査によれば、不妊の原因の約50%が男性にあると報告されています。
代表的な不妊の原因は以下の通りです。
- 排卵因子(排卵障害など)
- 卵管因子(卵管閉塞や癒着など)
- 子宮因子(子宮筋腫や子宮内膜ポリープなど)
- 頸管因子(粘液分泌異常など)
- 免疫因子(抗精子抗体など)
これを見ると、確かに女性側の要因が多い印象を受けるかもしれません。しかし、男性に原因があるケースも決して少なくありません。
特に、精子の数や質の低下、勃起や射精の機能障害などは男性特有の不妊原因であり、これを軽視してしまうと妊活が長期化してしまいます。
妊活を始める前に、男性が準備しておくべきポイントを解説します。
① 精液検査を受ける
女性の排卵検査と同様に、男性も妊活前に精液検査を受けることをおすすめします。
精液検査では以下の項目をチェックします。
- 精液量
- 精子の数
- 精子の運動率
- 精子の形態やDNAの状態
これにより、自然妊娠が可能かどうか、また人工授精や体外受精が必要かどうかを判断できます。
検査方法は以下の2種類です。

- 自宅でできる検査キット
- 専門クリニックでの精密検査
特に35歳を超えると精子の老化が進むため、早めに受けておくのが安心です。
② 風疹・性感染症の検査
妊娠初期に女性が風疹にかかると、赤ちゃんが「先天性風疹症候群」を発症するリスクがあります。
風疹ウイルスは感染力が強いため、男性も検査・予防接種を受けておくことが重要です。
さらに、クラミジアや梅毒、HIVなどの性感染症検査も妊活前に済ませておくと安心です。
③ 禁煙を徹底する
タバコは精子の質を低下させ、DNAを損傷させるリスクがあります。また、受動喫煙によってパートナーや赤ちゃんにも悪影響を及ぼします。
近年は加熱式タバコも普及していますが、研究によっては同様のリスクが指摘されているため、妊活を機に禁煙することが理想的です。
④ ストレスを溜めない
ストレスはホルモンバランスを乱し、性機能や精子形成に悪影響を及ぼします。妊活中は特に「排卵日プレッシャー」でストレスが高まりやすいため、意識的に発散しましょう。

効果的なストレス解消法の例:
- 質の良い睡眠をとる
- 朝日を浴びて軽い運動をする
- 趣味に没頭する
- 妊活仲間やパートナーと会話する
⑤ パートナーと話し合う
妊活において夫婦間の温度差は大きな壁になります。
「どのくらい妊活にお金をかけるか」「治療のステップをどう進めるか」など、妊活の方向性を話し合っておくことは非常に大切です。
ルールを細かく決めすぎる必要はありませんが、定期的に会話の時間を持ち、お互いの気持ちを共有することが妊活の成功につながります。

妊活に入ったら、男性は以下の生活習慣を意識して「精子の質」を高める必要があります。
① 精子の質を高める
精子は約70〜75日かけて作られるため、生活習慣の影響を大きく受けます。
近年は運動不足や偏った食生活の影響で精子数が減少し、運動率の低下が問題視されています。
そのため、日常生活の改善が必須です。
② 運動と睡眠を整える

- 運動:1日30分のウォーキングや筋トレがおすすめ。
- 睡眠:6〜8時間の睡眠を確保し、就寝・起床時間を一定に保つ。
リモートワークの普及で外出機会が減った人は特に意識的に体を動かすようにしましょう。
③ 栄養バランスを意識する

精子の質を高める栄養素として知られているのが、以下の成分です。
- 亜鉛:精子の生成に必須
- 葉酸:DNAの正常な形成を助ける
- ビタミンC・E:抗酸化作用で精子を守る
- オメガ3脂肪酸:血流改善・ホルモンバランス維持
食事で摂るのが理想ですが、難しい場合はサプリメントの併用も有効です。

④ 定期的な射精
精子は溜めすぎると劣化します。性交渉はもちろん、自慰行為による射精も妊活にプラスです。
理想は2〜3日に1回程度ですが、無理なく「定期的に射精すること」を意識すれば十分です。
男性妊活の今とこれから
昔は「妊活=女性が頑張るもの」というイメージがありましたが、今や男性も積極的に参加する時代です。
精液検査や生活習慣の改善、パートナーとのコミュニケーションを通じて、妊活は「夫婦二人三脚」で進めるのが基本です。
不妊に悩む夫婦は増えていますが、その背景には男性側の生活習慣や健康状態が深く関わっていることがわかってきています。
だからこそ、男性自身が妊活を「自分ごと」として捉え、取り組むことがこれからの妊活において欠かせません。

まとめ
- 不妊の原因の半数は男性にある
- 妊活前には 精液検査・風疹検査・禁煙・ストレスケア・夫婦の話し合い を行う
- 妊活中は 生活習慣の改善・栄養摂取・定期的な射精 が重要
- 妊活は女性だけでなく、男性も主体的に関わることが妊娠への近道
妊活は「夫婦で一緒に進めるプロジェクト」です。
女性を支える立場であると同時に、男性自身ができることを行動に移すことが、赤ちゃんを迎える大きな一歩となります。
参考文献・引用元
- WHO: Infertility – https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/infertility
- 日本泌尿器科学会「男性不妊症ガイドライン」https://www.urol.or.jp/
- 厚生労働省「風しんについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000030296.html
- 日本禁煙学会「喫煙と生殖機能」https://www.jstc.or.jp/
- 日本メンズヘルス医学会「ストレスと男性不妊」https://www.menshealth.or.jp/
- 日本産婦人科医会「妊活と夫婦関係」https://www.jaog.or.jp/
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と健康」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
- 国立健康・栄養研究所「栄養素とサプリメント」https://www.nibiohn.go.jp/
- 日本泌尿器科学会「男性不妊における性生活指導」https://www.urol.or.jp/